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統計の性質とヘッジポジションのリバランス
ペーパーバック版(Black & White Economy version)を購入しました。価格はリーズナブルですが、稀に一部の図表、色で識別する偏差や分布なのどのグラフが白黒のため判別しづらくなります。 タレブ氏の著書は、ビジネス書と一般向けの啓蒙書の印象がありますが、本書は統計の専門書になっています。 この著書は、不確実で複雑な現実社会をどのように生きるかという、著者のIncertoプロジェクト(Antifragile,The black swan, Fooled by Randomness, the Bed of Procrustes, Skin in the Game;2001-2018)の一環として執筆されています。Incertoプロジェクトの主要な考えは、現実世界の多くの不確実性の中で、不確実な情報から所与の状況でどのような行動を起こせば良いのかを理解することです。本書では、彼が”ブラックスワン”の概念と共に世に広めたファットテイルに関連した統計の性質が解説され、そのファットテイルで示す統計の現実世界における予測と認識論が展開されています。 現在の金融界が依拠するリスク管理の基盤が内包する脆弱性を解きほぐしてくれています。本書の非技術的概要にリストしているように、成立しない仮定の上で展開される理論の上で成立、管理されているシステムには脆弱性があります、おそらくこの内容の著書(Incertoプロジェクトの一つ)は彼以外からは出ないでしょう。金融工学が切り開いた世界の側面にある仮定の集まりの性質を詳らかにし、統計上の厚いテイルに関する技術的な適用性の問題を再認識させてくれます。 統計の基礎の章で、"ウィットゲンシュタインの定規”について触れてあります。これはテーブルを測るのに定規を使うか。定規を測るのにテーブルを使うか”という問いのことです。ことは相対的であり、結果によります。ブラックスワンは知識の不完全性の結果です。ブラックスワンが観測者に依存することを示しています。彼の比喩を使えば、”トルコにおけるブラックスワンは、肉屋の主人にとっての白鳥”です。 非技術的な概要として、彼の固有のアフォリズムで、従来の金融の技術体系に対する批判が鋭利に展開されています。いくつか抜粋すると、4."ベータやシャープレシオのような共通の乗り物の金融測度は、情報が不十分である。"(実際、すべての経済変数と金融資産は厚いテイルである。4万銘柄の株式を調査しても薄いテイルはひとつもない。これは金融と経済の誤りの主要な根源のひとつ。厚いテイルでも平均ー分散ポートフォリオ理論が働く。) この問題は、たとえ分散が存在しても、許容可能な正確さであるかどうか、私たちにはわからないことです。著者は、実際、共分散行列を使った経済論文は疑わしい、と主張しています。これは4章で詳細が論じられています。5. "ロバスト(Robust)な統計はロバストではない。実証的な分布は実証的ではない。"(ソビエトの公式な雑誌、プラダ(Pravda)という名前は、まるでジョークのような、ロシア語で”真実”を意味しています。)著者は、Robustな統計は、ほとんどの専門家が気づいていない悪ふざけのようなものだと主張します。 洪水から保護するビルの建設を例にします。実証の分布は過去の最大の洪水のレベル、”過去の最大値”を示しています。 これは、 ローマの詩人、ルクレティウスによる”物の本質について”の中の誤った識別、”最も高い将来の山は、以前に見た最も高いものに等しい”という考えです。過去に起きた最大の洪水の水準を最大値に設定した場合、それを上回る水準の発生確率はゼロに設定されます。この設定に依拠すると、私たちは永遠にルクレティウスの誤りを繰り返すことになります。 この実証的な分布について、9章で、イェール大のシラー氏の論文の表紙の写しが添付されています。シラー氏はストックホルムの経済学賞を受賞されており、一般向け著書で、”根拠なき熱狂”という邦訳があります。論文のAbstractには、”過去の履歴データは、1日の株式市場の深刻な暴落の基礎になっている比率(base rate)は、相対的に低いことを示唆している”と記されてあります。 リスク管理に際し、その水準からどれくらい上の水準が保護できるかを調べる必要があります。 厚いテイルにおいては、過去の最大と将来の期待最大の間の差は、薄いテイルよりずっと大きくなります。 著者らの調査によると、学術会で発表される経済論文の多くがこうした成立しない仮定の下で展開されているようです。 このように、本書はテーマ毎にファットテイルな統計の性質を数式と図表で示してあります。11章の”ファットテイル下での確率の補正”、で展開された確率の合成と期待ペイオフに関する論述は興味深く読ませてもらいました。 人類が経験した大戦に関しても短い章が設けてあります。スティーブン・ピンカーの主張に対する著者の見解が記されてあり、一読の価値があるでしょう。
ترست بايلوت
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